I want to sing this...

ヒトカラ大好きおっさんの戯れ言

MISTRESS OF ALL TIME / URIAH HEEP ~ 彼方なる偏見がもたらすもの

世界で一番美味しい肉料理は、誰が何と言おうが、とんかつなのである。

サクサクの衣をガブっとかじり、中に閉じ込められた肉汁と程よい硬さのロース肉の絶妙なコラボレーションが、私を至福の道へと導いてくれる。

だが、とんかつの美味さに目覚めたのは、そんなに昔の話ではない。

かつて勤務した某地で、何かのイベントの後にたまたま立ち寄ったとんかつ屋で、一日5食限定の黒豚ロースかつ定食を、思い切って頼んだところ、目からウロコ、ならぬ口から涎が落ちるくらいの美味さが、私の舌を開眼させたのであった。

焼肉も、ハンバーグも、ステーキも、鶏のから揚げも、未だかつてこれ以上の衝撃を私に与えたことはない。

外食チェーン店でのとんかつだろうと、スーパーの豚肉を自分で衣を包んであげたとんかつだろうと、わりあい手軽に満足させてくれるのも、平民の私にはありがたいところだ。

もちろん、これは、世界中の肉料理を食べ尽くした上でたどりついた境地ではない。

グルメ番組で見るような、むしろ油の塊じゃねえのと突っ込みたくなる霜降り肉なぞ、ただの一度も口にしたこともない。

まさに、偏見である。

いいじゃないの、こんな誰にも迷惑かけない偏見なら。

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「1970年代の一番素晴らしいブリティッシュ・ハードロックバンドは?」と訊かれれば、当然のことながら、ユーライア・ヒープに決まっているのである。

ゼップ? パープル? なるほど、彼らも確かに素晴らしい。

彼らの楽曲にも私の心を鷲掴みにするものもあることは否定のしようがない。

だが、「LED ZEPPELIN Ⅳ」「MACHINE HEAD」「DEMONS AND WIZARDS」というそれぞれの代表作を並べてみて、どれが一番愛せるかというと、やっぱり最後のやつであることに揺るぎはない。

理屈じゃない。心がそれを求めているんだもの。

そして、とんかつと同じく、彼らの素晴らしさに目覚めたのは、そんなに古い話じゃない。

中高生の多感な時期を80年代ロックに費やした私にとって、上記3バンドはすでに私の中では古典ロックな存在だったわけだが、ゼップ、パープルファンの知人はいても、ヒープが大好きなんて言う人は誰もいなかったし(今も大のヒープファンって人には残念ながら巡り会えていないけど)。

何となくヘンテコな響きのバンド名と、「対自核」という訳のわからない邦題だけが印象的なくらいでしかなかった。

月日は経ち、何の気まぐれか、1回くらい聴いとこうかと思って手にしたのが、当時の彼らの最新アルバムであった「SEA OF LIGHT」だった。

このアルバムが類まれなる名盤であったのが幸いした。

そして次に手にした「DEMONS AND WIZARDS」で、私の偏見はもう完全に出来上がってしまったというわけだ。

彼らの曲全部が素晴らしいとまでは言わないが、それでも、私が愛してやまない曲が多いのは、ゼップ、パープルより、やはりヒープが圧倒的なのである。

今回取り上げたこの曲は、「SEA OF LIGHT」収録の名バラード。ほんわかした平和な雰囲気のサウンドに、バーニー・ショウの力強くもしっとりとしたボーカルが見事に調和している。ハイトーンの多い彼らの楽曲だが、これなら私でも原曲キーで歌える。

同アルバムは他にも「LOVE IN SILENCE」というこれまた甲乙つけがたい名曲があるんだが、今回は歌いやすさを重視してこの曲を選んだというところである。

 

まあ、なかなか自分の思うようにいかない人生の中にあって、好きな食べ物や音楽くらいは、自分の感情に正直でいたいものである。それがたとえ、他者から見て「偏見」と見られたとしても。

好きなものを好きなように楽しめる。幸せって、そんなものだろう。

 

 

 

 

【おまけにもうひとつ~こんなのも歌いたい~】
  BEAUTIFUL DREAM / URIAH HEEP

 せっかくなので70年代の楽曲から。妖しすぎるイントロからなんかどこぞの悪の秘密結社のテーマソングのような曲調に、金切り声のボイスが乗っかるところがもう癖になる。もっとも、私には出せない高さなのが少々シャクなのだけど。

 アルバム「RETURN TO FANTASY」収録。

 

 

 

寒い夏 / 山下達郎 ~ 淋しさは季節を問わないもの

今年の夏も暑かった。

ニュースでは連日、猛暑の話題を報じ続けていたが、これほどまでに暑さが続くと、もう、最高気温が30度台後半だろうと全く驚くにも値しない。

もはや「猛暑」だけではニュースバリューがあるのかどうだかさえ怪しい。

学校ではプールの水温が上がりすぎて、水泳の授業さえできないところもあると聞く。

知り合いの話だと、あまりに暑すぎて海も閑散としているとも聞く。

一日一回は外出して、陽の光を浴びないと治まらない私でさえ、あまりの気温の高さに、一日中家に閉じこもったままの休日を送る羽目に陥ったりもした。

この殺人的な暑さの中、甲子園はいつもの通り高校野球が行われていた。

普段から酷暑の下で練習しているから、彼らは何ともないのか。いや、そうとも思えない。

たぶん、死者か重篤な症状を起こす者かが発生しない限り、この夏の我慢大会は続けられるのであろう。

せめて、大阪ドームで実施することができたら、選手も、観客もかなり負担を少なくできるような気がするのだが。

伝統という名の足かせが、そこに立ちはだかる。

そういえば、来年の夏は東の方で、オールスター世界対抗運動会が行われるんだっけ。

いったい、何の拷問なんだ。

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おっさんの世代にとっては、チューブが登場するまでは、山下達郎こそが「夏の音楽」として認知されていた。

RIDE ON TIME」「LOVELAND ISLAND」「高気圧ガール」のようなヒット曲はもとより、アルバム単位でも「BIG WAVE」のようなまんまサーフィンアルバム(映画のサントラでしたけどね)作ってみたり、歌詞も夏を彷彿させる内容も多かったしで。

潮目が変わってきたのは、アルバムでいうと「POCKET MUSIC」あたりかな。レコーディングにコンピューターを導入し始めたところから、サウンドの質感が若干変わってきたようなところがある。

それとやっぱり「クリスマス・イブ」の存在が大きいだろうな。

もちろんその後も「踊ろよ、フィッシュ」や「さよなら夏の日」みたいな夏ソングはあるのだけれど、今や彼が「夏の代名詞」かと言われると、必ずしもそうではないとは思う。

今回取り上げるこの「寒い夏」。

アルバム「僕の中の少年」の中の、どちらかというと地味な曲だ。

タイトルから何となく想像できる通り、決して明るい歌じゃない。

『何気ない僕の小さなひとこと』から出て行ってしまった恋人。

『とり戻したいものは 若さや時間じゃなくて』君だけなんだというのが、歳を重ねたがゆえに迎えた、側に寄り添ってくれる存在が誰もいない孤独感、淋しさをしみじみと浮かび上がらせる。

もう一つ特筆したいのは、こんなタイトルなのに、歌詞に「夏」を思い起こさせるフレーズがほとんどないことだ。

本来、こうした孤独感、淋しさを表現するには、通常「秋」か「冬」が適役なのだろうけど、それを「寒い夏」としてみたのが、かつて夏の代名詞とまで言われた、彼なりの矜持なのかもしれない、と勝手に思っておくことにする。

噂では、本当は夏が「大嫌い」ならしいですからね。達郎さんって。

 

それにしても、本当に今年の夏も暑かった。

たまには冷夏も味合わせてくれよ。淋しさとかは抜きでね。

 

【おまけにもうひとつ~こんなのも歌いたい~】
  十字路 / 山下達郎

 「POCKET MUSIC」収録の、これまた地味な曲。三連符のリズムに乗りながら『雨の十字路』で『立ち尽くす』ほかないやるせなさが、少ないフレーズの中でうまく表されているところがいい。『君へと・・・』から始まる彼の十八番であるファルセットは、いつ聞いても鳥肌モノ。

 

 

 

NEVER AGAIN / ASIA ~ 再出発への決意みたいなもの

9か月ほど、仕事を休んだ。

しょっぱなから面倒くさい記事だが、これに触れておかないと自分自身が前に進めないような気がするので。

原因はいくつかあるのだけど、格好いい言い方をするなら「燃え尽きた」ということ。ぶっちゃければ、やる気を失くしたってことだけなんだが。

『誰のせいでもない 自分が小さすぎるから』

休む前は、家から一歩も出られなくなり、自分でももうダメだと悟った。

病院に行き、診断書をもらい、上司に報告した。

「今は何も考えなくていいから、ゆっくり休みなさい」

それがただの気休めから出た台詞だったとしても、この言葉は私にとって大いに救いとなった。

9か月間は、自分のやりたいように生きた。

収入が激減し、何かと物入りの中、妻は文句も言わず何とか家計のやりくりをしてくれた。

子供たちは、「お父さんが毎日いてくれて嬉しい」とむしろ喜んでくれ、コミュニケーションの機会も増えた。

自分の居場所があるということに、これほど幸せを感じたのは、今までなかった。

もう一度、やり直そう。

何とか、新たな一歩を踏み出すことができた。みんなのおかげだ。

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2008年、アルバムタイトルの通りまさに「不死鳥」のごとく甦ったASIAのアルバム「フェニックス」は、私の中では、全盛期の名盤にも勝るとも劣らぬ作品として、今なお思い入れの深い愛聴盤だ。

往年のバンドの再結成ってやつにいつも懐疑的であった私としては、再結成のニュースを聞いた際には「えー、ウェットンとハウ上手いこと行くんかいのお」と慎重になってはいたのだが、いざアルバムを手に入れて、オープニングのこの曲を聞いた瞬間、それが全くの杞憂に終わったことに感謝したものだ。

イントロのハウのギターに続き、とことことことんとつなぐパーマーのドラミングに導かれ歌いだすウェットンにヒョンヒョンヒョンと合いの手をうつダウンズのキーボード・・・、ASIA以外の何物でもないお約束の展開が広がっていくのを目の当たりにしてしまえば、もう全く文句のつけようもないではないか。

"This is the day, the day of liberation / A time for life, for new regeneration"

うん、まさに、カムバックというやつに相応しい歌詞だよな。

残念に思うのは、通信カラオケには、この曲が入ってないということ。

「HEAT OF THE MOMENT」「DON'T CRY」そして「GO」・・・どれも素晴らしいオープニングだし、スゴク気持ちよく歌えるという意味では甲乙つけがたいのだけど、やっぱり今の心境から言えば、これからも何とか生きていきたいなという思いを込めて「NEVER AGAIN」を心の糧として、勝手に歌い続けていこうと思う。

ちなみに、私自身のこれからの「NEVER AGAIN」は・・・

「もう決して無理はしない」ってとこかな・・・。

 

 

【おまけにもうひとつ~こんなのも歌いたい~】

  VALKYRIE / ASIA

 ウェットンが鬼籍に入った今、もう新しいアルバムを聴くことは叶うまいが、今のところ最後のアルバムでもある「グラヴィタス」のオープニングのこの曲も捨てがたい。とりあえず何も考えずに「ばーるきりぃぃ~ぃぃ~ぃい」って繰り返すだけでも十分気持ちいいが、ブリッジの部分の悲壮感漂う歌メロも結構ツボ。